数年前から兼務で、とある住宅関連の公益法人の理事をしていて住宅に関わるトラブル解決のサポート等を行っている。
様々な問題解決に向けて微力ながら活動しているが、
ここ数年は、障害者の居住の場である障害者のグループホームの普及活動も行っている。
世話人さんらに一定のサポートを受けながら自立を目指して数名で暮らしていく場所だ。
多くの入居者は日中は仕事や職業の訓練などに出かけていく。
グループホームといえば高齢者向けが普及しているが、障害者のグループホームはあまり知られていない。
高齢者へのケアは子世代が行っていくことが一般的だが、障害者の親にとって自身が亡くなった後、子供がきちんと暮らしていく事ができるのか、大きな不安を抱いている。
ご高齢の親御さんからは、とても切実な旨の内を何度も伺った。
実は私の息子にも知的障害がある。
それまであまり先々の事は考えていなかったが、将来を思うと大きな不安の塊が押し寄せてきた。
親が死んだ後、どのように生きていくことが幸せなのだろうか。
健常者であろうが、障害を持っていようが、人と関わり合い、充実した仕事を持ち、
社会の一員として役割のある生活を送る事が幸せな生き方だと思う。
至れり尽くせりのサポートを受けることではなく、(障害の程度によってではあるが、)
一定のサポートを受けて出来るだけ自立した生活を送ることができる事が望ましい。
そうした意味において、グループホームはとても良い仕組みであるとつくづく思った。
しかし、障害者向けのホームはまだ少なく、特に都心では行政が目標とする数を下回っている。
大家さんから借りて運営するものや、運営者が建築(新築、もしくは既存建物を改築)するには、様々な法規制、資金手当て、大家さんとの調整、行政への諸々の届出など範囲の広い事柄について手続きや調整をしていかねばならないので、ホーム運営者だけでは大変な作業である。
ホームを開設しようとすると近隣の方々から反対を受けることも多々ある。
情報を整理し調整していくコンサルタント、或いはコーディネーターが存在すれば普及につながる大きな役割を担うと思う。
昨年、大家さん向けにガイドブックを作成したところ、予想以上の反響があり、きちんと知ってもらえば関心を持つ人が多いことは大変ありがたいことだった。
大家さんにとっては賃貸収入を得る「事業」であることが基本だが、中には、多少賃料が低くなっても是非利用して欲しい、というお声もいただいている。
ホームを運営する福祉の現場で働く方々はとても使命感があり誠実な方が多い事も知った。
障害があるということは確かにハンディがあるのだが、少し補うことで普通に生活できる。
「ノーマライゼーション」*という考え方が福祉の現場では浸透してきている。
障害をもっているということは特別なことではなく、ひとつのキャラクターだと私も思う。
障害者を持つ親御さんや我が子がきっかけとなり、少し踏み込んでいったという動機ではあったが、
温かく熱意のある多くのある方々と関わらせていただくことになったのは、私にとって大きな財産であり人として成長させていただいたと思う。
振り返れば、これまで息子には随分と成長させてもらった。
(まだまだ先だが)いつかその成長をノーマライゼーションの実現に少しでも役に立てていけるようになりたいと思う。
*ノーマライゼーションとは
障害者や高齢者など社会的に不利を受けやすい人々(弱者)が、社会の中で他の人々と同じように生活し、活動することが社会の本来あるべき姿であるという考え方。